This is a cache of http://www.cubeland.net/jirei_htm/500110/. It is a snapshot of the page at 2019-03-24T00:04:07.210+0900.
金子義則 / 「卓球」を通して子どもたちを育む - 教育情報サイト キューブランドWeb

インタビュー&コラム

Column

「卓球」を通して子どもたちを育む
静岡県卓球協会の取り組み

静岡県卓球協会 強化部 強化委員長
金子 義則

(2018/03掲載)

 昨今、スポーツ界における若い選手の活躍が目覚ましい。特に卓球は勢いのあるスポーツのひとつだ。リオデジャネイロオリンピックでの日本人選手の活躍も記憶に新しいのではないだろうか。静岡県では、第一線で活躍する選手が県内出身であることもあり、その人気は高まっている。実は静岡県は卓球人口が全国でも三本の指に入るほど、卓球が盛んな地域である。その静岡県から今、多くのジュニアアスリートが育っている。今年10月に行われた「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」の団体戦では、少年男子の部で静岡県勢初の4強入りを果たした。決勝戦では、愛知県勢に惜しくも敗れたものの、見事準優勝という成績を残した。こうして若い世代が活躍する背景には、どのような指導や環境があるのだろうか。そのヒントを探るべく、静岡県卓球協会が運営する合同強化練習を取材した。

講師の指導を自分のものにしようと聞き入る子どもたち

 静岡県卓球協会は、静岡県内の卓球関係者から成る組織である。全員がボランティアとして活動し、大会の運営や若手選手の指導にあたっている。また、静岡県の西部・中部・東部の3つの地域に17の支部があり、各地域の大会や練習会等を運営している。静岡県の卓球を支える重要な存在である。
 取材当日行われていた合同強化練習は、県内の小学生・中学生・高校生の上位選手を集めたものだ。トップレベルの選手を育てようと、3年前から始められた。練習は、講師が打法について実演を交えた指導を行ったり、複数の指導員が練習会場を巡回し一人ひとりをサポートしたりする形で進んでいった。子どもたちは、試合さながらの真剣な表情で練習に打ち込んでいた。

自分で考える力を養う

プレースタイルの違う選手との交流は子どもたちにとって刺激となり、モチベーションアップにつながっている

普段見ることの少ない歳の離れた選手のプレーを、真剣な表情で見つめる

技術だけでなく基礎となる体づくりの講習も行われる。写真は体幹トレーニングの様子

 合同練習会の運営にあたる静岡県卓球協会強化部・強化委員長の金子義則氏は、子どもたちが自分で考えて練習することの大切さについて語る。

「卓球には教科書的なものがあまりなく、体格も違えばプレースタイルも人それぞれです。例えば、まだ卓球台の端に手が届かない小学生は高校生と同じように打つことは難しいので、その分自分はどうしたらいいのかと代替案を考えたり、自分には向かないやり方だと取捨選択したりすることが求められます。指導されたことを自分事として捉え、咀嚼し、活かしていけるかどうかで練習の質は大きく変わります」。

 この日も、練習の冒頭に、「練習の意味」や、「習得した技術を試合でどう活かすか」を考えて取り組むよう指導がされた。一つひとつの練習会には目的があり、強化するポイントも絞られている。それを意識して練習に臨むことで、自分で考える癖がつくそうだ。そうした練習を継続する中で、子どもの成長を感じる瞬間があるという。

「試合後に、勝った理由や負けた理由を自分の言葉で言えるようになると、成長したなと感じます。自分の『良かった点』と『課題』が客観的に分かっている証拠だからです」。

 このように子どもたちが自分の言葉で分析できるようになるには、子どもたちをサポートする周りの大人の声かけも大切だという。金子氏は、子どもたちに対して、前向きになれるような言葉を選ぶようにしているという。

「勝って嬉しいとか、負けて悔しいとか、そうした強い感情が生まれることが、卓球を含めたスポーツの魅力だと思います。その感情を否定したり抑えつけたりするのではなく、子どもの立場になって受け止めた上で、自分の良いところや課題に気づけるような声かけをするように努めています」。

 さらに、金子氏は保護者が子どもにどんな声かけをしたらよいかを考える機会をつくり、家庭とも連携して子どもたちを見守る雰囲気づくりもしているという。
 こうした身近な大人のサポートが、子どもたちが判断したり選択したりする際のヒントになり、「自分で考える力」を培う助けとなっているのではないだろうか。

次の世代へ、想いをつなぐ

 金子氏は、子どもたちが大人になっても、様々な形で卓球に関わり続けてくれることを願っている。

「今卓球に取り組んでいる子どもたちの中で、将来選手として活躍するのは一握りかもしれませんが、卓球を続ける道は選手になることだけではありません。卓球に限らず物事はたくさんの人が関わることで成り立っています。私たちのように、若い選手をサポートする役割もそのひとつです。『選手として活躍する人たちのそばに支える人たちがいる』という価値観を子どもたちにも持ってもらえたらと思います」。

 その言葉の裏にあるのは、小学生のころから静岡で卓球をしてきた経験だ。金子氏は小学校四年生の時に卓球を始め、現在まで続けている。

 「これだけ長く続けてこられたのは、卓球をする環境を整えてくれる人たちの存在があったからだと思います。自分もそのような存在になって恩返しをしたいと思ったことが、卓球協会に携わるようになったきっかけです。今指導している子どもたちがいずれ社会に出たとき、その中の誰かが同じように下の世代に教えていく。そうしたサイクルをつくることを含めて自分の使命だと思っています」。

 卓球を愛する人々が、また次の世代に想いを伝えていく。こうして育まれてきた"次の世代を応援する風土"こそが、全国で活躍する若い選手育成の一翼を担っているのではないだろうか。

金子 義則 先生

静岡県卓球協会 強化部 強化委員長

【プロフィール】

日本体育協会卓球公認コーチ。練習会等の運営や、県内の学校に出向き部活動での出張指導を行う。高校・大学と全国大会上位入賞。選手として現在も地区大会等に出場している。

スズキ教育ソフト